博士課程への進学で考えるべき5つのお金の稼ぎ方【収入源の確保は大切です】

研究生活
SEIKO SUGIMORI
せい

こんにちは、せいです。ショウジョウバエの発生遺伝学で博士(理学)を取得し、大学で研究員をしていました。

博士課程に進学したいけど、研究にしっかり打ち込むにはどうしたらいいだろう。

まずは、安定した生活費を確保しましょう!

なぜなら、お金がないと金銭面や将来が不安になり研究に集中することができなくなるからです。

例えば、食費。「この定食だと高い」「コンビニの飲み物は高いから、買わないでおこう」と考え始めると、研究以外のことで頭を使ってしまい、本来研究で使うべきエネルギーが消耗してしまいます。

研究はうまくいかないことがほとんどです。精神的安定を保つためには悩み事は少ないほうがいいです。まずは、金銭面の不安をなくし研究に没頭しましょう。

本記事で紹介するお金を確保する方法は、5つです。

  1. バイト
  2. 奨学金
  3. 学振
  4. 国立研究所の制度を利用
  5. 発信

これらを順番に紹介していきます。

1. バイト

お金を稼ぐ方法として、真っ先に思いつくのがバイトだと思います。ただ、バイトは拘束時間が長く、研究時間を削ることになるのでオススメしません。特に、コンビニやスーパーのレジ打ちなど、誰にでもできるような経験やスキルしか身につかないバイトはやめましょう。

しかし、バイトの中でも、さまざまな研究室で募集されているTAやRAはオススメです。

なぜなら、他の学生に教えるというコーチングの経験ができる、新しい実験手法が身につく、他研究室の人たちとコミュニケーションをとることでアイディアが生まれる可能性があるからです。これらの経験は、研究者としても重要なマネジメント能力の基本となるスキルです。

例えば、私はショウジョウバエの発生遺伝学の研究をしていましたが、他大学でショウジョウバエの研究をしている研究室のTAをした経験があります。学生実験の補助をするだけでなく、自分の研究内容を紹介する機会をいただき、どうしたら興味を持って発表を聞いてもらえるのかを考えてプレゼン資料をつくりました。

のちに日本分子生物学会で若手優秀発表賞を受賞するのですが、この経験も役立ったと思います。

ただし、生活費をまかなえるほどの収入にはなりません。

2. 奨学金

次に思い浮かぶのは、奨学金でしょうか。

博士課程に進学する人のための奨学金はさまざまありますが、一番有名でハードルが低いのは、日本学生支援機構の奨学金だと思います。

日本学生支援機構の奨学金は、一種と二種がありますが、返済に利子がつく二種を借りるのはやめましょう。

なぜなら、返還の義務のある奨学金は”投資”にも”借金”にもなります。利子が付かない一種の奨学金は、借りた額だけ返還すれば良いので自己投資と考えればいいですが、利子がつく二種はローン、つまり人からの借金となんら変わりません。返済の利子分だけ、払う金額が増えてしまいます。利子がつかない奨学金は将来の自分からの投資と思いましょう。

とはいえ、数百万になる奨学金を返済できるのか不安になる人もいると思います。

実は、日本学生支援機構の奨学金は、優秀な成績と認められると返済が半額または全額免除になる可能性があります。これは所属している大学によって、基準はさまざまですので学生係などに問い合わせてください。

そのため、可能であれば、奨学金は最大で借りることをオススメします。なぜなら、最大約440万円をもらいながら進学したのと同じことになるからです。つまり、生活費を稼ぐために使わなくてはならない時間を節約することができます。

とはいえ、返還免除にならなかったとき、将来、奨学金を返済できる職につけるかわからないのも不安に思う人はいますよね。

私も日本学生支援機構の一種の奨学金と、後でお話しする研究室からもらっていたお金で生計を立てていましたが、奨学金を返済できるか不安を抱えていました。実際、修士課程で1年間借りた奨学金は半額免除になりましたが、博士課程は免除になりませんでした。

私は学位を取得後研究員を経て企業就職しましたが、現在30代前半で年収650万(ボーナス除く)です。30代の平均年収は400万円ほどなので、かなりもらっている方だと思います。

こういう風に書くと、すごい業績があるんでしょ?と思うかもしれませんが、そんなことはないです。投稿論文は3報(筆頭2,第3著者1)、若手発表賞受賞のみ。ScienceやNatureなどの投稿経験はなく、培養細胞やマウスを取り扱うこともできません。そして、このあと書く学振も取っていません。

正直、就職活動(転職活動)はかなり苦労しましたが、奨学金の返済に困るような会社に就職はしませんでした。どうしても不安な方は、こちらの記事で就職活動について書いているので参考にしてください。

日本学生支援機構の奨学金で生活費をまかなう時は、一種を最大限借りて返済免除を目指しましょう!

こちらにその他の給付金や奨学金制度をまとめましたので、ご一読ください。

お金の不安解消!?給付金・奨学金がもらえる大学院&制度
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3. 学振

次は、日本学術振興会の特別研究員(DC1、DC2)になることです。

いわゆる学振を取ることができればDC1だと月20万×12ヶ月×3年=720万と研究費をもらいながら研究をすることができます。毎年、4月上旬ごろから申請が始まるようですので、詳しくは日本学術振興会のHPで確認してください。

学振のメリットは、お金を稼ぐための時間を節約できる、お金の心配をしなくていいという精神的余裕をもてるだけでなく、研究者として重要な業績になることです。また、小さい研究室に所属している人にとっては、自分の研究を自分の研究費ですることもできるのは、大きなメリットになると思います。

デメリットは、バイトをすることができないことくらいでしょうか。また、同世代で企業就職した人と比べれば、安定しているとはいえ収入は少ないと感じるかもしれません。しかし後で紹介する「発信」によってお金を稼ぐ方法は学振の採択者でもできるので、学振で安定収入をもらいつつ、「発信」による収入も目指すのはいかがでしょうか。発信による収入は、稼ぐのは大変ですが稼げるお金の上限は青天井です。

結局どうしたら学振(DC1、DC2)に採択されるのでしょうか?残念ながら、私はDC1は面接でDC2は書類で落ちてしまったので、どうしたら採択されるのかをお伝えすることはできません。

みのんさんという方のブログでは、論文無しでDC1に採択された方法を詳しく書かれているので、参考にしてください。かなり有益で、私も知っておきたかったです。

学振への採用は狭き門ですが、金銭面の不安をなくし心の余裕ができるだけでなく、研究者としての業績にもなるので、ぜひ最大限の準備をしてチャレンジをしてください!

4. 国立研究所の制度を利用

次に紹介するのは、国立研究所の制度を利用することです。国立研究所の制度を利用し、お金をもらうということはあまり知られていないかもしれませんが、私はこの制度を利用して学費分はもらっていました。

ここで紹介するのは大きく分けて二つです。

  1. 理化学研究所の大学院生リサーチ・アソシエイト(JRA)に応募する。
  2. 国立研究所所属の大学院生になる。

4-1. JRAに応募する

理化学研究所では、博士後期課程在籍(予定)者を非常勤として受け入れる制度を設けています。お金をもらいつつ研究の指導も受けられるということで、将来一流の研究者になりたい方には非常二いい制度だと思います。月額164,000円(別途交通費)ですが、研究の指導を理化学研究所に受けられるという点では、学振よりもいいかもしれません。

ただし、受け入れ先の研究室は決まっているので、自分のやりたい研究テーマができるかどうかということと、所属研究室や大学の許可が取れるかはきちんと確認する必要がありそうです。

また、お金をもらいながら日本最高峰の研究室の指導を受けれるということはそれだけ優秀な人材が応募してくると考えられるので、採用されるのは狭き門だと思います。

さらに

契約期間は1年ですが、契約期間中に博士号を取得した場合、または大学院を中途退学した場合はその時点をもって契約を終了します。
また、所要の評価により最長3年間(標準修業年限が4年の課程に所属の方は4年間)、継続して契約を更新することができます。

ということですので、契約期間が博士課程在籍中ずっとというわけではなさそうです。

ただし、挑戦するのはタダなので、しっかり準備をして申し込んでみてはいかがでしょうか?

詳しくは理化学研究所のHPを確認してください。

4-2. 国立研究所所属の大学院生になる

総合研究大学院大学(総研大)の生命科学研究科では、RAとして年に数十万から100万円ほど支給されます。私は、国立研究所所属の大学院生になることで年60万をもらい、学費に当てていました。私は愛知県岡崎市にある基礎生物学研究所にいたのですが、まず、総研大の大学院生になる必要があります。基礎生物学研究所に所属するには、総研大の生命科学研究科、基礎生物学専攻の受験をします。

総合研究大学院大学(総研大)は、博士前期課程(修士)から進学できる大学院大学で、5年一貫制です。そのため、博士後期課程で進学する際は3年次編入という形になります。博士前期課程で進学しても基礎生物学研究所の場合は年60万円がRAとして支給され、さらに日本屈指の研究施設や教授陣の元で研究ができるので、自分がやりたい研究テーマと一致する場合は進学をオススメします。

※2019年度から年間約100万円に給与が増額したようです!

詳しくは総合研究大学院大学のHPや基礎生物学研究所のHPを確認していただければと思います。

その他、給付金がもらえる大学院をまとめたこちらの記事もご一読ください。

お金の不安解消!?給付金・奨学金がもらえる大学院&制度
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5. 発信

最後に紹介するのは、「発信」によって生活費を稼ぐ方法です。

発信によってお金を稼ぐってどういうこと?と思われるかもしれません。

ズバリ、ブログとYoutubeです!ブログとYoutubeは広告費によって収入を得ることができます。

発信による収入のメリットは、

  • 研究者に必要なライティング技術を高めることができる
  • 有益な情報を一度発信できれば、収益が安定的に得られる
  • 自分や自分の研究成果を世の中の人にアピールすることができる
  • 情報を整理する力が身につく

つまり、研究者として必要なスキルを高め、自分自身や世の中にアピールすることができ、さらに収入も得ることができます。その収入も、有益な情報を発信できればできるほど上がっていき、一度バズれば時間を切り売りしなくてもブログやYoutubeがお金を生み出してくれます。

ただし、すぐに収益化するのは難しく、最短でも1年以上は必要であることを頭に入れておく必要があります。

そのため、もし発信でお金を稼ぎたいと思っている人は、博士課程に進学する前に発信での収益化及び発信する習慣をつけておく必要があります。

まとめ

この記事では、博士後期課程に進学したい人の生活費をまかなう方法について紹介しました。

博士後期課程は、研究者としての基本を身につけるための重要な時期です。お金は大事ですが、金銭面での不安をなくし、少しでも多くの人が大好きな研究に打ち込める環境を作れることを期待しています。

 

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