今後のキャリアを左右する!研究室の選び方とは?

研究生活

こんにちは、せいです。生物系研究者を経て会社員として働いています。

私は博士から研究室を変えて博士号を取得しました。研究室ってどうやって選んでいけばいいのか?悩む人も多いですよね。

私がどのように研究室を選び、どうやってその研究室に入ったのかを失敗談を踏まえながら紹介していきます。

卒業後はどのような進路を考えているか?

大学、大学院での研究室選びの際、まずしっかりと決めておかなくてはいけないことは、【就職するのかどうか?】です。

このまま研究を続けていく(進学、アカデミア)と考えている場合、次の章から読んでいただければと思います。

研究は卒業・修了するまでと考えている人は、「自分がしたい研究ができる」「研究実績を積めそう」といった基準よりも【就職に有利か】【就職活動に集中できるか】というような基準で考えましょう。

はっきり言って、学部時代の研究内容が会社で役立つことはほぼありません。修士卒でさえ、自分の研究内容かそれに近い内容の研究部門に入ることは狭き門です。理系学部卒の場合は銀行員や学校の先生といった職に就く人が多いのが現実です。

それなら、研究に力を入れて就職活動に支障をきたすような研究室を選ぶのではなく、就職活動に力を入れてても文句を言われないような研究室を選択する方が懸命です。

強いて言えば、今流行りの技術に触れられるような研究室であれば、選択肢に入れてもいいかもしれません。例えば、バイオインフォマティクス、培養細胞の操作、イメージングなどです。

ただし、就職することが目標であれば、優先順位としては【就職活動がやりやすい】ことが1番です。

それでも、就職活動だけでなく研究も頑張りたいと考えている方は、次の章以降もぜひ読んでください。

博士進学のための研究室選択基準

では、今後も研究を続けていきたいと考えている人は、どのような基準で研究室を選択すれば良いのでしょうか?私が実際に博士時代の研究室を選んだ基準と失敗談から、研究室選びで失敗しない方法を紹介していきます。

まず、当時の私の状況です。地方国立大学で学部と修士で同じ研究室に所属。修士から他の研究室に移るか悩みましたが、研究が論文にまとまりそうだったので、修士までいることに。その後、世界でもトップレベルの教授の研究室へ入るために国立の研究所へ。

私がこの研究室を選んだ理由は、

  1. 自分が興味のある研究テーマだった
  2. 世界で活躍する研究者になるのが夢で、レベルの高い環境に身を置きたかった
  3. Science誌やNature誌に複数回論文を出しており、そんな研究ができると思った
  4. 助教の方と知り合いで、雰囲気が良い研究室だと思った

ところが、実際は教授からのアカハラに悩まされ、心を病み、論文はおろか学会発表すらさせてもらえず、オーバードクターと単位取得退学を経験。アカデミアで生きていくことを諦め、会社員を目指すことになります。

このような失敗談から学んだ研究室選びに大切な基準について書いていこうと思います。

※余談ですが、博士号取得を目指している方は、修士と同様の研究室で博士号取得をお勧めします。なぜなら、博士から研究室を変えると実質2年ほどで研究結果を出しまとめる必要があるためです。新しい環境に慣れる必要もあるため、ストレートでの博士号取得はかなり厳しいです。博士から研究室を変える場合は、オーバードクターは覚悟しなくてはいけません。

学生は多いか?

そもそも学部生や大学院生は、その研究室は多いでしょうか?

「別に学生がいなくても平気」

と思う方もいるかもしれませんが、学生がいない研究室の場合、教授やラボメンバーがあなたを教育をしてくれる可能性は低いでしょう。少なくとも、学生を教育することには慣れていなさそうです。

「教育なんて不要。自分で何でもできる」

果たしてそうでしょうか?まずは、しっかりと研究とはどういうことをしたら良いのか、きちんと教えてもらえる研究室が良いです。たとえ、そんな基本的なことはわかっていたとしても、アドバイスをもらえる環境であるに越したことはありません。

研究はうまくいかない事が基本です。学生がいない研究室にいるポスドクや助教は少数精鋭の場合が多く、つまりあなたの研究に対する苦しみを理解されない可能性があります。同じ立場の人の方が、焦りやもどかしさを話しやすいのではないでしょうか。

教え子がPIとして育っているのか?

こちらも、その研究室が教育に力を入れているのかを判断する指標になります。皆さんが将来、アカデミアとして生きていくにはPIポジションを狙っていくことになるでしょう。

そんなPIを輩出していない研究室は、やはり教育に力を入れていなかったのだと判断できます。特に、その研究室の歴史が長い場合は危険です。

なぜか?それは、今までのその研究室を卒業して行った人たちが、研究者として必要な素養が身に付いていなかったと考えられるからです。

気をつけて欲しいのは、学部生や大学院生としてその研究室に入った人に対してです。ポスドクや助教の場合、他の研究室で教育を受けている可能性があるので、そういった方々がPIになっていることは、考慮してはいけません。

つまり、特に大学院生でどの研究室を選択するのかは、今後、アカデミアで生き残っていく上でも重要な要素になると言えるでしょう。

自分の教え子ばかりの研究室になっていないか?

教え子ばかりがいる研究室はかなり危険です。なぜなら、気心知れたメンバーで構成されているため、外から入ってきた人たちの意見が通りにくい傾向にあるからです。教授の力が強すぎる可能性があります。

教授の意見が通りやすい、言いなりという部分も問題ですが、同じような意見を持つ人たちばかりの環境だと新しいアイディアが生まれづらいことも問題です。

研究は、これまでの研究結果の積み重ねの他に、異なる分野の考え方や知識の融合によって成り立ちます。そうであるにもかかわらず、他の考えが受け入れられないことで、アイディアの偏りが生じ、より良い研究成果を生み出す事が困難となります。

論文をコンスタントに出しているか?

論文をコンスタントに出しているかどうかは、きちんと研究をしている研究室なのか?を判断する要因になります。論文がコンスタントに出てこないというのは、研究があまりできていないか、研究をまとめる力が低い研究室である可能性が高いです。

研究室の規模(どのくらい助教やポスドクがいるのか)にもよりますが、最低でも年に1本以上論文を出していないと、あまり研究ができるような環境ではないと判断して良いでしょう。

また、ハイレベルの雑誌にばかり投稿している場合も要注意です。Science誌やNature誌、Cell誌などハイレベルの雑誌ばかりに投稿するということは、【ホームランばかりを狙っている】研究室だと判断できます。

博士課程でホームランを狙うと、よほどの事がない限りオーバードクターは免れません。小さい雑誌でもまず論文としてまとめて修了する道筋を作ってから、ハイレベルの雑誌を目指す。そうでないと、精神衛生上良くありません。

プラスして、科研費を毎年取ってこれているのか?も確認することは大切です。最悪、研究するためのお金が足りなくなり、実験がしたくてもできないという状況になりかねません。少なくとも自分がその研究室に在籍している間は、研究費を確保できそうかを確認しておきましょう。

定期的にHPは更新されているか?

HPの更新頻度が重要なの?と感じるかもしれません。

研究室のHPは、その研究室がどういった研究を行なっているのか、論文がどのくらいの頻度で出されているのか、研究室の雰囲気はどうかなどを知る事ができる重要な情報源です。

本来、研究室を運営していく上でも、学生やポスドクなど人を増やしていくことは重要であるはずです。しかし、HPの更新を定期的に行なっていない研究室は、そういったある種のリクルートのような作業を怠っていると言えます。

研究も会社同様、人がいるから成り立っているにもかかわらず、そこを怠っている研究室がいい研究室であるとは言えないでしょう。

学振採択者を多数輩出しているか?

博士後期課程に進学する場合、お金は切っても切り離せない問題です。そこで皆さんがまず挑戦するのは日本学術振興会(学振)の特別研究員(DC1、DC2)でしょう。DC1やDC2に採択されれば、月20万円の給与が保証されるので、何が何でも採択されたいところだと思います。

そこで研究室を選ぶ際に重要な要素になってくるのは、その研究室からDC1やDC2の採択者が輩出されているのかどうかです。多数学振採択者を輩出している研究室は、恐らく採択されるような人が集まりやすいのかサポート体制が充実している、研究テーマが学振に採択されやすいなどの要因があるのだと思います。

(私が所属していた研究室は学振採択者が少なかったため、憶測になってしまいますが・・)

日本学術振興会のHPから、どこの大学の誰がどういった研究テーマでDC1やDC2に採択されたのかを調べる事ができます。しかし、気をつけて欲しいのは、その採択者がどこで研究を行なっているのかです。

例えば日本学術振興会のHPにA大学所属というように書かれていたとしても、特別派遣学生のように他の研究機関で研究をしている方の可能性もあります。その場合、所属研究室が学振採択に影響をしているのか、それとも派遣先の研究室が影響しているのかを見極める必要があります。

どのように研究室を見つけてきたのか?

最後に、実際にどのように私がそこの研究室を見つけてきたのかを紹介します。

結論からいうと、読んでいた論文からです。

興味がある分野の論文を複数読んで、この教授のもとで研究がしたいと思い、HPを調べて直接教授と連絡を取りました。

論文とは言わずとも、学会や大学のHPなどで興味のある研究をしている研究室を探す事が多いかなと思います。

一番手っ取り早いのは、日本分子生物学会などの様々な領域の発表がある学会に参加し、自分が興味のある研究分野の発表を片っ端から聞きにいくことです。ポスター発表は、直接話をしやすいので、研究のこと以外にも研究室の雰囲気を聞いてみるのもいいと思います。

おわり

私は研究室を選ぶ際、教授のネームバリューや論文の多さなど外面ばかりで選択してしまいました。結果、その教授とソリが合わず、博士時代はかなり苦労をしてしまいました。

今回のブログでは、そういった私の失敗談から、どのような基準で研究室を選んだら良いかを書きました。

研究室選びに悩んでいる人の少しでも役に立てたら嬉しいです。

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