口頭発表賞受賞者が教える、効果的なスライド作成術

研究生活

こんにちは、せいです(@PhD_sei)。生物系研究者から会社員として働いています。

今回の記事では、プレゼンテーションで使うスライドをいかに効果的に作るのかについて紹介していきたいと思います。

私は、日本最大級の学会である日本分子生物学会の口頭発表で、若手優秀発表賞を受賞した経験があります。

その経験から、効果的なスライドをいかに効率的に作成していくのかをご紹介していこうと思います。

「スライドを作るのに時間がかかってしまう」

「どのように作り始めればいいのかわからない」

「スライドをうまく作りたい」

そんな人にぜひ読んでもらいたいと思います。

スライドの作成手順

まずは、スライドの作成手順を紹介します。

スライド作成にいきなり取り掛かってしまうと、実は時間が余計にかかってしまいます。

作っても話の流れの辻褄が合わなかったり、伝えたいことを伝えたいだけスライドを作ると指定の発表時間に収まらなかったり、ただただ冗長なスライドセットになるからです。

いきなりスライドを作り始めるのではなく、スライド作成するための準備が大切です。

早速、スライド作成のための準備についてみていきましょう。

伝えることの明確化

最初にしたいことは、このプレゼンテーションで何を伝えたいのか?を明確にすることです。

研究紹介をして欲しいと言われて、これまで行った実験の結果を一から順番に説明をする人がいます。

しかし、聞き手が知りたいのは、これまでどういう実験をしてきたか?というより、どういう実験から何がわかり、そこから何が言えるのか?ということです。

ただただこれまでの実験の話を聞かされても、「だから何?」と感じてしまいます。

これまで行ってきた実験から何が言えるのか?をまずは考えましょう。

スライドの枚数の決定

学会発表などは発表時間が決められているため、スライドを作成する前にどのくらいのスライドの枚数が必要なのかをザックリでも考えておく必要があります。

闇雲に作り始めると、時間が足りなくなりスライドを削除し無理やり他のスライドに情報を詰め込んだり、逆に時間を持て余し不要な情報を追加することになります。

経験上、1枚のスライドあたり1分から1分半ほどかかるイメージです。

つまり、発表時間が例えば10分の場合、スライドは10枚前後です。

後述しますが、1スライド1メッセージがスライド作成の基本です。そのため、1スライドに3分とかかかる場合、情報量が多くないか?を考える基準にもなります。

あらかじめ枚数を予想することで、限られたスライドの枚数の中でどう話を展開するか?どういったスライドを作る必要があるのかを考えることができます。

プレゼンテーションの構成

スライドの枚数を決めたら、プレゼンテーションの構成を考えます。

学会など研究を発表する場合、プレゼンテーションの基本構成は①実験背景、②実験結果、③考察、④今後に向けてというような流れになります。

イメージとしては、論文のような流れでプレゼンテーションも話すようにしていきます。ただし、論文の場合は研究背景(introduction)に対してもそれなりの分量がありますが、プレゼンテーションの場合は、自分が行なった研究結果の内容により重きを置くことを意識しましょう。

具体的には、例えば10枚のスライドを作成する場合、①研究背景に1,2枚、実験結果に5,6枚、③考察に1,2枚、④今後に向けてに1枚といった感じです。

どういった実験をされているのかによって多少前後すると思いますが、スライドの重みのイメージはこういった形になります。

大まかな流れを作成

スライドの枚数をおおまかに決めたら、次はプレゼンテーションの流れを考えます。明確にした伝えたいことにたどり着くように、論理的に流れを考えます。

ここでもまだスライドの作成をしません。

紙でもWordなどでもいいのですが、伝えたいことへたどり着くような大まかな話の流れを作ります。

この作業は、頭の中でやらないことが大切です。一見面倒そうに感じられると思いますが、可視化することで話の辻褄があっていないことや情報の過不足などに気がつくことができます。

頭の中で考えるとこのような可視化がスムーズに行えません。何度もどういった流れを考えていたのかを思い出す必要があり、実はとても時間の無駄になります。

無駄だと思われそうなこういった作業を一度行えば、見直しも非常に楽で、スライド作成の時間を短縮させることができます。

イメージとしては、1枚目の研究背景にこういった情報を盛り込む、2枚目は背景の続きにこの情報を盛り込む、この背景を受けて3枚目はこういった実験の結果を示して、どういうことが言えるのかを書く・・・といったような形で、スライド一枚一枚にどういった内容を書くのかを考えます。

ここで話の流れがうまくいかない、もう少しここの構成の情報を増やしたいなど気がつくことができるので、もう一度構成を練り直したりスライドの枚数を調整します。

ここをクリアすれば、スライドの作成はかなり楽になります。

スライドの作成方法

スライドはシンプルに、言いたいことが相手に伝わりやすいことが大切です。

スライドを大きく「タイトル」「本体」「まとめ」というふうに3つに分けて説明していきたいと思います。

1スライド、1メッセージ

プレゼンテーションは限られた時間に、論理的な流れで伝えたいことを伝える必要があります。

そのため、一瞬でも聞き手に「え?どういう意味?」と思わせてはいけません。

そう思われてしまうと、その後の発表内容が聞き手の頭に入っていきません。

発表者の伝えたい想いが強いとついつい大量の情報を一枚のスライドに入れたがってしまいます。

そんな大量の情報を短時間で聞き手に理解してもらえるでしょうか?

大切なのは、自分が伝えたいことをとにかく伝えることではなく、聞き手が知りたいことを理解できる情報量でわかりやすく伝えることです。

そのためには1スライドで伝えたいことは1つだけに絞ります。

タイトルには伝えたいことを書く

スライドのタイトルに行なった実験内容を書いていませんか?

タイトルは、そのスライドで最も人の目に入り目立つ位置です。

どういう実験をしたのか?という情報は、聞き手に本当に伝えるべき情報でしょうか?伝えたいのは、そこから何が言えるか?です。

そのため、スライドで最も目立つタイトルの位置には、その実験から何が言えるのか?を書きます。

そうすることで、スライドの細かい部分に注目せずとも、視覚的に聞き手がこのスライドで何を言いたいのかを瞬時に理解することができます。

タイトルはできるだけシンプルに、言いたいことが伝わる言葉をチョイスします。1行以内で収まるように、冗長にならず端的に伝わるようにしましょう。

必要最低限のグラフと画像を選ぶ

スライドの本体には、研究結果の画像やグラフなどを記載します。

その際重要なのはやはり情報量です。

限られた時間の中で、論理的に話を展開しつつ、聞き手に内容を理解してもらう必要があります。「これだけ実験をやってきました」ということをアピールするのではなく、最終的にこのプレゼンテーションで伝えたいことにたどり着くための、必要最低限の画像やグラフにします。

画像やグラフが多くなると結局どれが重要なのかを理解することが難しくなってしまいます。

仮に、もっと他の情報を見せたいと思った場合、聞き手からの質問用に別スライドを準備するということも大切です。

プレゼンテーションもコミュニケーションの一つだと私は考えています。一方的に伝えたいことを伝えるのではなく、プレゼンテーションで本筋の話をし、聞き手からの質問によってさらに話を膨らませていくことも、プレゼンテーションの大切な一部です。

本体にもタイトルをつける

どういった情報を伝えているのか?を聞き手が瞬時にわかるようにするために、画像やグラフのタイトルをつけましょう。

例えば、ただグラフを載せるのではなく、「〇〇遺伝子を抑制したときの細胞数」といったように、そのグラフが何を表したグラフなのかを記載します。

ただグラフだけ、画像だけが並べられたスライドを見せられても、聞き手は理解できません。説明するからいいと思うかもしれませんが、聞き逃した人はもうあなたの発表についていけなくなってしまいます。

タイトルをつけることは、聞き手に瞬時にグラフや画像の中身を理解してもらうこと、説明を聞き逃してしまってもいつでも話について来れるようにするために大切です。

まとめには結果を書く

本体の下部に位置する「まとめ」の部分には、どういった実験をしたのか?をシンプルに書きましょう。

2行以内、できれば1行で収められるような、端的でわかりやすい言葉を選ぶことが大切です。

繰り返しになりますが、聞き手は大量の情報を理解することや、長い文章を瞬時に理解することが難しいです。そのため、文章や情報量はできるだけシンプルで理解しやすくする必要があります。

見やすくシンプルな見た目にこだわる

かっこいいスライドを作りたいと思う人も多いでしょう。

そのためには、スライド作成の基本を学ぶ必要があります。その基本中の基本が、見やすくシンプルなことです。

まず、前述したように、1スライドの情報は1メッセージにしましょう。その理由は、情報量が多すぎること以外にも、情報量が多くなることで文字が小さくなってしまうことを避けるためでもあります。

例えば、学会で8ptで書かれた文字が後ろの席に座っている人に読めるでしょうか?何種類という色で描かれたカラフルなスライドから、どこが重要なのか読み解ける人はいるでしょうか?

最低でもフォントサイズは20pt以上、グラフなどの数値は12pt以上を目安にしましょう。また、文字の色は3種類以内に留めることが大切です。

このように、スライドの作成には聞き手の立場に立って考えることがとても大切です。

シンプルなスライドは会社でも役立つ

実は、これまで紹介したスライド作成方法は、外資系コンサルタントの経歴を持つ独立研究者の山口周さんの著書「外資系コンサルのスライド作成術」でも紹介されています。

つまり、今回ご紹介したスライド作成方法は、大学だけでなく会社員として働き始めても有用です。

詳しくは、山口さんの著書もぜひ読んでみてください。

おわりに

初めての研究紹介や学会発表でどういったスライドを準備すればいいかわからないという人は多いのではないでしょうか。

何度も発表の機会に恵まれたけど、結局どうのようにスライドを作れば良いかわからず、独学でこれまで作っていた人もいるかもしれません。

私も学生時代は、どうすればより効果的なスライドを作ればいいのか悩んだ一人です。

博士時代は、何度も教授から怒られたりもしました。

このようにに、私自身も悩みましたが、今回ご紹介したスライド作成方法で日本最大級の学会である日本分子生物学会で発表賞を受賞するまでになりました。

また、外資コンサルタントの経歴を持つ山口周さんもご紹介している作成方法とも類似しているので、とても再現性の高いスライド作成術だと思います。

少しでも多くの方が、効果的なスライドを作成できることを願っています。

それでは、また。

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