こんにちは、せいです。生物系研究者から会社員として働いてます。
今回の記事では、博士課程での学費・生活費をどのようにして賄うのか?について書いていこうと思います。
D進をする際に不安になる金銭面。その中でも生活費と学費は大きな割合を占めると思います。
「博士課程に進みたいけど、経済面が不安」
と考えている人に、ぜひ読んでもらいたいです。
※2021年7月現在の生命科学系を中心に紹介します。
今後博士課程進学者に向けた支援は拡充の予定
「日本の博士課程の学生に対する待遇は、世界に比べると低い」
こういった話を聞いたことがある人は多いと思います。待遇が悪く、博士課程へ進む学生が減少し日本の科学技術が衰退していることに、国も危機感を感じて今後は対応をしていくような流れになっています。
これまでの国の対応を考えると、ポストがないのにもかかわらず無計画に博士を増やしたり、後手後手の対応だったり、「2位じゃダメなんですか?」というトンチンカンな女性国会議員がいたり(1位じゃないと意味がない)、色々思うことはありますが、それでも何も対応策が取られないよりはマシかなと思います。
「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」という博士課程学生対する支援が、令和2年の第三次予算案に記載されています。
これによると約15,000人の博士課程学生に対し、生活費と生活費+研究費の支援が行われるということです。
こちらの資料だけでは具体的な金額は分かりませんが、180万円〜290万円/年になると考えられます。
私は大学院の給付金で学費を賄い、生活費は奨学金だったのでとても羨ましい制度だなと思うのと同時に、私のように経済的な不安を抱えずに研究に打ち込むことができる学生が少しでも増えればと思いました。
現在でも、大学院独自や企業が参画をしている給付金や奨学金制度が様々あります。以降の章では、大学院での給付金や企業や団体が行なっている奨学金制度についてご紹介します。
給付金をもらいながら研究が出来る大学院
まずは、給付金がもらえる大学院、特に生命科学系の大学院についてを紹介します。
まとめを見たい方はこちらからどうぞ。
※全てを紹介しきれていない可能性があります。また年によって応募要件など変更される可能性があります。必ずご自身で確認の上、応募してください。
総合研究大学院大学
総合研究大学院大学の生命科学研究科では、専攻によって異なりますが、リサーチアシスタント制度によって給与が支給されます。また、この大学院大学は、博士5年一貫制なのですが、5年一貫制(修士課程相当)と5年一貫制3年次編入(博士課程相当)でももらえる給与が変わってきます。
また、総合研究大学院大学に所属していなくても特別共同利用研究員として派遣されることで、同様の給与をもらうことができる可能性があります。
また、2022年を目処に、博士5年一貫制の3年次からの3年間、生活費年間3,500,000円程度を支援する制度を始めるそうです。こちら
遺伝学専攻
5年一貫制で入学した大学院生は、リサーチアシスタント制度により、年間710,000円の給与を得ることができます。3年次編入の場合、780,000円の給与と入学料相当の280,000円程度も合わせて、初年度は年間1,060,000円の給与が支給されます。
基礎生物学専攻
5年一貫制で入学した大学院生は、リサーチアシスタント制度により、年間1,000,000円程度の給与を得ることができます。3年次編入の場合も同様に、年間1,000,000円程度の給与を得ることができます。
生理科学専攻
5年一貫性で入学した大学院生は、リサーチアシスタントとして雇用され、年間約1,000,000円が支給されます。入試の成績が極めて優秀な場合、年額約1,700,000円、優秀だった学生は年額約1,400,000円が支給されます。3年時編入の場合も同様です。
産業総合研究所
産総研は、優れた研究開発能力を持つ大学院生を産総研リサーチアシスタント(契約職員)として雇用します。雇用された大学院生は、産総研が実施している社会ニーズの高い研究開発プロジェクトに参画すると共に、その研究成果を学位論文に活用できます。
産業総合研究所の研究開発プロジェクトの推進に大きく貢献可能な研究開発能力や論文生産能力を持ち、職員の指導のもと自律的に業務を遂行できることが条件となります。
月額約200,000円が支給されます。
理化学研究所
大学院博士(後期)課程に在籍する柔軟な発想に富み活力のある若手研究人材を非常勤として理研に採用し、知識・経験豊富な研究者と一体となって研究を展開することにより、理研の創造的・基礎的研究を推進するとともに、研究所と国内大学等との間の協力関係の強化を図ることを目的としています。
国内の大学院の博士課程に在籍し、理研と連携協定を締結している大学院に在籍する方(見込を含む)、または理研研究者と共同研究を実施している大学院の博士(後期)課程在籍者(見込を含む)で、理研で研究指導を受けることについて在籍する大学院から許可を得られる人が対象です。
月額164,000円と通勤手当(上限:月額55,000円)が支給されます。
沖縄科学技術大学院大学
経済的懸念を払拭し、研究に専念するため、OISTでは博士課程の学生に対して、授業料相当額及び年間約240万円程度(課税対象)をリサーチ・アシスタントシップとして支給しています(いずれも返還不要)。さらに、学生は他大学への訪問旅費、パソコンの貸与のほか、 国際会議出席の旅費についても支援を受けられます。
博士課程の学生に対し、授業料相当額及び年間約2,400,000円とリサーチアシスタントや学外の奨学金を合わせた600,000円の合計年間3,000,000円まで受け取りが可能です。
東北大学
既存のディシプリンにとらわれない自由な発想や異分野との自由な交流の実現、複眼的視野で多角的にみる見方や創造的な「総合知」の醸成のために独自のカリキュラムを各研究科や卓越した研究者の協力を得て開発し、大学院教育の一環として提供するとともに、異分野融合領域で活躍を希望する優れた学生を選抜し、経済的支援及び研究支援を行います。
日本学術振興会特別研究員(DC)相当の奨学金支給と1,500,000円以下の研究費が支給されます。
東京理科大学
東京理科大学大学院博士後期課程(薬学研究科薬学専攻の場合は博士課程)に進学する学生のうち、研究等の業績が特に優れ、将来、高等教育機関の教員を希望する人物良好な学生を奨励することを目的として給付型奨学金(返済不要)の奨学生募集を行います。
年額500,000円、在籍期間中の3年間支給されます。
青山学院大学
博士後期課程又は一貫制博士課程に優秀な学生を受け入れ、又は若い人材の本大学院への進学意欲若しくは本大学院に在学する学生の学修意欲を増進させ、もって本大学院の活性化を促進し、高度な専門性と研究能力を備えた社会に貢献する若手研究者の育成に資することを目的とする給付奨学金の制度です。
博士後期課程の標準修業年限または、一貫制博士課程の3年次~5年次(3年間)、授業料が全額免除になります。
博士課程で申請できる給付金・奨学金制度
次に、企業や団体が行なっている給付金や奨学金制度を紹介します。
全てご紹介できていない可能性もあり、また紹介している制度に全ての学生が応募できるわけではありません。ご自身でご確認の上、応募をしてみてください。
まとめを見たい人はこちらからどうぞ。
※地域限定、女性限定は除いています。また生命科学系のものに関して記載しています。
※年によって応募要件など変更される可能性があります。必ずご自身で確認の上、応募してください。
日本学術振興会
優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることにより、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的として、大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等で、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を「特別研究員」に採用し、研究奨励金を支給する制度です。
若手研究者の登竜門とも言われる日本学術振興会の特別研究員です。博士課程1年次はDC1、2年次以上相当の場合はDC2に応募ができます。
DC1の場合は3年間、DC2の場合は2年間月額200,000円と毎年度1,500,000円以内の研究費が交付されます。
特別研究員以外の身分を持つことはできません。
公益財団法人 旭硝子財団
旭硝子財団の奨学プログラムは、産業、経済及び社会の進歩、向上を担う優れた人材を育成するために、優秀な大学院修士・博士課程の学生に、返済義務のない奨学金を支給し、指導助言も提供するプログラムです。
公益財団法人 旭硝子財団の奨学金プログラムでは、指定の大学院に所属する修士課程と博士課程の学生が申請できる奨学金制度(給付型)です。それぞれ2年間、3年間が限度で、月額75,000円と月額100,000円です。
学生本人から直接の応募は受け付けておらず、指定の大学院の推薦を通して応募を受け付けています。
公益財団法人 サントリー生命科学財団
生物有機科学分野に学ぶ大学院学生(主に博士後期課程学生)を支援します。返済を要しない奨学金(月額60千円)を大学院在学中の最長3年間支給します。
国内の大学院の理学、農学、工学、薬学、医学などの研究科が対象です(臨床医学、臨床薬学などの疾病診断・治療や新薬開発を目的とする分野は除く)。博士課程の学生や博士課程への進学を希望する大学院生が応募することができます。給付型で月額60,000円が最長3年間支給されます。
年度末に奨学生本人による研究成果報告や指導教官による修学状況、素行などを記載した報告書を提出する必要があります。
日本学術振興会特別研究員との併用はできません。
公益財団法人 尚志社
社会に役立つよう勉学に勤しむ学徒に対し、その学科の如何を問わず、また学業終了後の就職も各自の自由意思に委ねることを前提とした返還不要の奨学金制度を設けています。
学部生でも申し込める奨学金(給付型)です。修士課程と博士課程の1年生が申請できます。入学金(上限:300,000円)、授業料(上限:1,000,000円/年)の実費が支給されます。また、書籍および下宿補助が、自宅通学の場合は50,000円、自宅外通学の場合は70,000円が月額支給されます。
奨学金受給期間中、財団が各地区で年1回実施する社友懇話会に必ず出席すること、受給期間を通じて最低1回(原則として採用年に)、機関誌「尚志」に必ず寄稿することなどが条件にあります。
※2021年度の募集終了
公益財団法人 戸部眞紀財団
向学心に富む、日本国内で学ぶ学部生および大学院生に対して、奨学金によって生活と未来を支えることを目的とした活動をしています。
化学、食品科学の日本国内の大学院で修学している方が対象です。月額50,000円が給付されます。他の返済義務のない高額な奨学金との併用は可能ですが、半額になる場合があります。
公益財団法人 日揮・実吉奨学会
健康かつ学業優秀でありながら、経済的理由のため就学が困難な者に、奨学金の給付を行い、将来社会に貢献しうる人材を育成する。
指定大学の理工系の研究科に在籍している人が対象です。年額300,000円が支給されます(給付型)。他の奨学金との併用が可能です。
本人が直接応募するのではなく、指定の大学の担当課経由での申請となります。
公益財団法人 日本証券奨学財団
本財団は、将来社会の各分野において指導的役割を担う志のある資質優秀な学生を支援したいと考えており、この奨学金は、そのような学生の大学及び大学院における学業及び研究遂行のために給与するものです
専攻分野の制約がない給付型の奨学金です。自宅からの通学者は月額45,000円、自宅外通学者は月額55,000円が給付されます。
※2021年度の募集終了
公益財団法人 長谷川財団
日本国内の大学及び大学院において就学する者で、学業意欲旺盛、品行方正、健康でありながら、経済的理由等により就学困難な学生及び生徒を対象として、返済義務のない奨学金の給付を行っています。
日本国内の大学又は大学院に在学する人が対象です。月額30,000円が給付されます。
※2021年度の募集終了
公益財団法人 本庄国際奨学財団
日本の大学院で学ぶ日本人学生に対する奨学金。学位取得を目指して日本の大学院へ在籍中または入学試験に合格していれば応募できます。日本国籍に限ります。専攻分野は問いません。個人から応募いただけます。
学位取得までの最低年限を支給期間としています。金額は支給期間によって異なります。1〜2年の場合は月額200,000円、3年間の場合は月額180,000円、4年を超える期間の場合は月額150,000円が支給されます(給付型)。
奨学金支給中は就職やアルバイトは禁止です。TAやRAなど研究に関する仕事、通訳などの国際交流に関する仕事は可能です。
公益財団法人 山田長満奨学会
世界の平和及び経済成長並びに人々の幸福に寄与することを目的とし、日本や国際社会に貢献する人材を育成する公益財団法人です。
国内の大学院に在籍していれば応募可能です。月額120,000円が給付されます。他機関、法人、学生支援団体などの奨学金との併用が可能です。
公益財団法人 吉田育英会
当会は、国際舞台で活躍する未来のリーダーの育成を支援するため、優秀な大学院博士後期課程の学生 に返済の必要のない給与奨学金を提供します。また、当会の奨学生が末長い交友のネットワークを結ぶことを願って、奨学生の交流の機会を積極的に提供します。
博士課程に進学予定の方が対象です。月額200,000円、学費(奨学期間内、合計2,500,000円以内の実費)、海外での研究活動に関する費用(奨学期間内、合計1,000,000円以内の実費)を給付されます。
奨学金の対象となる分野は自然科学系分野です。年間1,000,000円以下の国・地方自治体や在籍大学が実施する他の給付型奨学金と貸与型奨学金との併用が可能です。
公益財団法人 武田科学振興財団
我が国の生命科学分野、特に疾病の予防・診断・治療の進歩・発展に貢献する為、医学部医学科出身の基礎医学研究を希望する博士課程の大学院生に奨学金を支給する事業です。
国内指定大学の医学系研究科の博士課程(基礎医学系)に入学予定の医学部医学科卒業(予定)の方が対象です。月額300,000円が2年間、最長4年間支給されます(給付型)。
独立行政法人 日本学生支援機構
奨学金は、学生が自立して学ぶことを支援するために学生本人に貸与されます。
奨学生が返還するお金は、次の世代の奨学金として使われ、先輩から後輩へとリレーされていくものです。このことを理解し、有効かつ計画的に利用しましょう。
最も有名な奨学金の一つだと思います。
日本学生支援機構の奨学金は、無利子の第一種と利子がつくタイプの第二種があります。
博士課程の場合、第一種では月額80,000円と122,000円、第二種では月額50,000円、80,000円、100,000円、130,000円、150,000円から選ぶことができます。
第二種の方が多く借りることができますが、返還の際に利子がかかることに注意が必要です。
公益財団法人 味の素奨学会
化学をはじめとする理系全般の学科を専攻する学生のうち、学業人物ともに優秀で、旺盛な勉学意欲を有し、かつ経済的援助を必要とする者。
こちらは貸与型の奨学金制度です。学費出資者と同居する場合、月額40,000円、別居の場合は月額45,000円を借りることができます。
公益財団法人 帝人奨学会
医学・薬学・バイオ学系、理学系、工学系、情報学系等に在籍している学生で次の条件に該当し、学部長又は学科主任教授の推薦を受け、かつ学校推薦を受けた者。
指定大学院で、博士課程進学が決まっている、または見込まれている学生が対象です。月額100,000円が支給されます(貸与型)。
修了後、帝人奨学会指定の大学や研究機関などで学術研究活動に貸与期間の2倍の期間従事した場合、返還が免除されます。
公益財団法人 東ソー奨学会
高校、高等専門学校、大学または大学院に在学する者で、品行方正、学術優秀、身体強健な者であり、学資の支弁が困難と認められる者。
HPには詳しい情報がありませんでした。指定構成をとっており学校を通じて毎年秋頃に募集をするそうですので、学校担当窓口にお問い合わせください。月額50,000円が貸与されます。
公益財団法人 みずほ育英会
みずほ育英会はみずほフィナンシャルグループの社会貢献の取り組みの一つです。
2年生以上の学部生、修士課程、博士課程の学生が申請可能です。大学院生は月額60,000円が貸与されます。日本学生支援機構のみ併用可能です。
給付金・奨学金のまとめ
給与がもらえる大学院
給付型
貸与型
おわりに
今回は、給付金をもらいながら研究ができる大学院の紹介をしました。
博士課程に進む上で不安になるのが経済面だと思います。国の政策でも博士への支援が徐々に始まる兆しがありますし、各大学院も独自に博士への支援を行なっています。さまざまな財団による支援もあります。
そういった給付金や奨学金を活用することによって、経済面での不安を少しでも緩和し、研究に集中できる博士の学生が1人でも増えると嬉しいです。
奨学金で幸せに暮らすための節約術は、以下の記事を参考にしてください。
それでは。
コメント
いつも参考になる記事をありがとうございます。
本筋とズレますが、蓮舫さんの発言については多くの研究者も(博士学生である私自身も)誤解しているところがあるかと思います。以下のリンクで私は認識を改めました。釈迦に説法かと思いますが、大変影響力のある方なので御一読お願いします。https://twitter.com/J_Steman/status/1167729548143673346?s=19